きらめき水

500mLと水溶性

 

・軽く腰掛けるだけでキィ、と音を上げる無機質なそれについ笑ってしまった。アクセサリーを取り外したばかりの軽い右手を口許に掲げ、そのまま筒状をつくる。あああっと声を出すと随分とこもった音が部屋の密度を少しだけ揺らしたのか、机上に並ぶ白い細身の缶がまたひとつ汗をこぼした。普段夢なんて見ないくせに、先程取っていた仮眠の最中に現れたお前がさ、声帯の専門家みたいなことを突然言い出すから。普段だったら気にも留めないようなことが気になるんですけど。…ってかさあ、音を立てるとは言うのに音が立つとは誰も言わないのなんかおもろくね。音には物心とか自我とかないんかなあ。

・「今日の夜ゲームしよ!」なんて言って別れた時に吹いた風の心地よさが好きだった。さて、もう自宅の玄関に足を踏み入れたであろう彼から何かメッセージは届いていないだろうか。慣れた手つきで手元の携帯を操作したはいいものの、期待していたアイコンからの新着メッセージは特になかった。あれ、と思いはしたものの、俺よりもずっとずっとマイペースな彼のことだ、何やらひと段落するのを待つことにした。完全に手持ち無沙汰になった左手が、無意識のうちに画面を勢いよくスクロールする。そこに並ぶのは2行にすら満たないような吹き出しばかりではあるものの、俺にとってはすべてが大切で思い深いものなんだから、やっぱり文章は長く書けばいいってもんじゃないと思う。

・なんかネットニュースで見たよ、今日めちゃくちゃ流れ星が流れてくるんでしょ!と嬉々として伝えたら、ただでさえ低い響きが更にワントーン下げて「…なんかそれ、頭痛が痛いみたいだね」と告げた。そうこうしているうちに頭上では大量の星が飛び交っており、なかでも進行方向を誤ったらしい一部の輝きは、たまたま掲げていたスマホの液晶目掛けて思いっきり飛び込んできたため、流石の俺も声を上げてしまう。ねえ今の見た!?と言いたくて隣を見遣ると、満天の黒に1ミリも関心を示していないであろう猫背が正しく背中を丸め、黙ってネットニュースを読み込んでいた。一点から流れ落ちる黒髪はちょうどよく編み込めそうな硬さをしていて、そこまでしてようやく自分の指に彼の髪の毛が絡まっていることに気が付いたが、それに関しては特に咎められなかったのでそのまま好きに手を動かすことにした。

・もしわたしが実写化したら、最近フォローしたあのアイドルの子に主演を務めてもらいたいなあって思いました。4月20日の所感です。…もし、それでイメージと違う!そもそもあの子の実写映画なんて観たくねえよ!って言われ出したらそれはそれでおもしろいし、それとは真反対に仮に作品が大ヒットしたらどうなるんだろうね。わたしのことなんてみんな忘れちゃうのかなあ。まあ別にきみだけの脳みそになんとなく名前が焼き付けられてたらそれでいいんだけど。…ただ、その時にはもちろん年間契約の有料フォントを使ってよね。お金はわたしが払うから!

・言うつもりじゃなかったのに、時すでに遅し。君の耳は既にそれなりの粒度である僕の愚痴を拾っていて、それを受けてなのだろうか、驚きが隠せない、といったように目を丸くした。君は僕との共通点として目の形、と言っていた気がするけど、そんなかわいらしい瞳の震わせ方は到底できる気がしないよね、僕には。…とかなんとか考えていたら「俺もひとりでいる時が1番楽だよ」とか言ってくるからおれ…じゃない、僕は思わず椅子から転げ落ちた。反射的にそんなん嘘だよ、って応えようとしたけど、冗談でもそんなことを言ったら殴られるだろうな、と思ったからひとまず口をつぐんでおきます。

・通っていた高校の最寄りはなんと、それなりに大きなジェットコースターも備えられている、といった規模感でおなじみの遊園地から一駅の場所にあった。あの時は乗り込むアトラクションの類いにしかまるで興味がなかったけれど、今となっては毎日スケジュール通りに多様な演目の繰り広げられるシアターにも足を運ぶのだろうか。…いや、きっと行かないだろうな。その理由は驚くほど分かりやすいものだったが、口にしようと思うとなんだか無性に恥ずかしくなってきて、そのまま近くにあった洗面器に急ピッチで水を張っては勢いよく目蓋を浸した。

・服、選んであげようか?と訊いてきたのが大好きな君だったから少し悩んだけど、悩み抜いた末、懇切丁寧に断ることにした。向こうはわたしがここまでハッキリ言うと思っていなかったようで若干慄いているようにも見えたけれど、これは他でもないわたしのためだから、と自分だけが分かるようにして近くにあった空気を飲み込んだ。目視できるような質の酸素は決まって甘ったるいし、気付くと喉が渇いてるからあんまり好きじゃない。ついでにそう言うと、「何言ってんの、普段あんたがバカみたいに飲んでるオレンジジュースのおいしさの方がずっと分かんないよ」と眉をひそめた君が世界一やさしい頬杖をついた。

 

 

 

 

 

 

 

大昔にタイムラインで流行っていた#○○をイメージして小説の書き出し一文うんぬんかんぬんのやつ、一度やってみたかったから…という主張のもと、まさかの処女作を深夜テンションでぶん投げるっていうね。笑 だし、普通こういうのって140字以内でやるもんだと思うんだよね。いや、まじそれな。。

というわけで、なんとなくの答え合わせです。①ふわさん②あべさく③ふわとまゆ④みとうや⑤ふわぐさ⑥宮近くん⑦さくまさん :の画像を眺めながら取り組んでみた。🌟ただこれ、後から見返すのイヤだな〜…笑 ぜったい恥ずいもん。笑